私は30代のグラフィックデザイナーです。日中はクリエイティブな仕事に没頭し、夜は趣味の料理で心を癒やしています。デザインと料理、一見異なる分野に思えますが、私にとっては創造性を発揮する二つの重要な 要素となっています。
実は、この料理への情熱は幼い頃から芽生えていたように思います。5歳の頃、祖母の台所で過ごした夏休みの思い出が、今でも鮮明に残っています。
祖母は料理上手で、毎日美味しい家庭料理を作ってくれました。ある日、私はおにぎりを作りたいとせがみました。祖母は優しく微笑んで、小さな私の手を包むように、一緒におにぎりを握ってくれたのです。
ご飯の温かさ、海苔の香り、そして何より祖母の優しい手の感触。それらが一体となって、幼い私の心に深く刻み込まれました。完成したおにぎりは形が整っていませんでしたが、祖母は「とってもおいしそう」と褒めてくれました。その時の喜びと達成感は、今でも忘れられません。
この経験が、料理を通じて人を喜ばせることの素晴らしさを、私に教えてくれたのだと思います。それ以来、料理は私にとって特別な意味を持つようになりました。
大学生の頃は、忙しさにかまけて料理から遠ざかっていた時期もありました。しかし、就職してグラフィックデザイナーとして働き始め、仕事のストレスを感じるようになってから、再び料理の魅力に目覚めたのです。
デザインの仕事は、常に新しいアイデアと向き合う刺激的な毎日です。クライアントの要望を形にする過程は、時に困難を伴いますが、最終的な成果物を見たときの達成感は何物にも代えがたいものがあります。
しかし、仕事の締め切りに追われる日々は、ときに心身ともに疲れ果ててしまうこともあります。そんなとき、私を救ってくれるのが料理なんです。
先日、大型プロジェクトの締め切り直前で、かなりストレスが溜まっていました。その夜、冷蔵庫にあった食材で即興のパスタを作ることにしました。玉ねぎをじっくりキャラメリゼし、ベーコンを炒め、最後に生クリームとパルメザンチーズで仕上げた簡単なカルボナーラです。
包丁を使い、フライパンを振る。その動作の一つ一つが、仕事のストレスを溶かしていくようでした。出来上がったパスタを口に運ぶと、にんにくの香りと濃厚なソースの味わいが広がり、一日の疲れが吹き飛びました。食事の後、心地よい満足感に包まれながら、翌日の仕事への意欲が湧いてくるのを感じました。
料理は、デザインと同じく創造的なプロセスです。しかし、即座に結果が目に見え、味わえるという点が、長期的なプロジェクトの多いデザインの仕事とは異なります。この即時性が、私に新鮮な喜びをもたらしてくれるのです。
もう一つ、忘れられないエピソードがあります。先月、友人たちを招いてホームパーティーを開きました。メインディッシュは、初めて挑戦するビーフウェリントンです。
下準備から始まり、牛フィレ肉をマッシュルームのデュクセルで包み、さらにそれを薄くのばしたパイ生地で包む…各工程に細心の注意を払いながら、まるでデザインプロジェクトに取り組むかのように丁寧に作業を進めました。
オーブンから取り出したビーフウェリントンを切り分け、友人たちの前に並べたとき、歓声が上がりました。「レストランみたい!」という言葉に、思わず顔がほころびました。
友人たちと料理を囲みながら過ごす時間は、デジタルな日常から離れ、人とのリアルなつながりを感じられる大切な 瞬間 です。料理を通じて人々を幸せにできることに、深い満足感を覚えます。
デザイナーとしての私と、料理を愛する私。この二つの顔が、私という人間を形作っています。これからも、仕事では斬新なデザインを生み出し、プライベートでは美味しい料理で人々を笑顔にする。そんなバランスの取れた人生を歩んでいきたいと思っています。
今夜は何を作ろうかな。冷蔵庫を開け、新たなインスピレーションを求めて、また一つクリエイティブな時間が始まります
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